12月29日に鶴岡市先端研究産業支援センターのレクチャーホールで開催された「ディスカバ つるおか」。「ヒトを知って、鶴岡を再発見する」をテーマに行われた熱いトーク&交流会の様子を、前編、中編、後編にわたってお伝えします!
ディスカバつるおかとは
このイベントは、鶴岡・庄内で地域を盛り上げているゲストスピーカーの方々の活動を知ることによって「ヒト」の切り口から、鶴岡の魅力を知る&再発見することを目的としたものです。
名札には呼ばれたい名前を記入。これで交流会への準備はばっちり!当日は約30名の方々が参加。自己紹介からスタートし、30分のテーブルトークが3回とふりかえり、という流れで行われました。
ゲストスピーカーは強い想いや大きな夢を持って鶴岡で活動している7人の方々。
ゲストスピーカーを囲んだテーブルトークを通じて、多様な価値観にふれることで、参加者は地元の鶴岡を再発見したり、新たなつながりを作っていました。
私たちも参加者として、鶴岡を盛り上げる先輩たちのお話を伺いましたのでレポートします!
多国籍丼を通して庄内の食の豊かさを伝える 堀 優歌さん
庄内の豊かな食に真摯に向き合い、新しい形の「食の都」を創造している料理人、堀さん。ユニークなメニューが人気の「りば亭」を始めるまでの思いを伺いました。
多国籍丼と焼き菓子のお店「メシとカシ りば亭」について
堀さんは鶴岡市で「メシとカシ りば亭」を経営する料理人。多国籍丼はメインのエスニックなおかずと、農家さんとの関わりの中で手に入った旬の野菜をたっぷり使った副菜がのった丼ぶり。毎回味付けの異なる、堀さんのセンスが光る人気メニューです。
料理人を選んだわけ
小学校の頃から料理をする機会が多く、そのうちに料理が好きになり調理師学校へと進学。「お世話になった方に直接恩返しができるのが、お店という形なのでは」との思いから、自分のお店を出すことを目標にしていた堀さん。フレンチでの修行やカフェレストランでのメニュー開発、と経験を積みますが、コロナ禍で飲食業界が一気に落ち込みます。
しかし、ここで一念発起!当時働いていたお店の定休日を返上し、知り合いの店で週に1回の間借り営業を始めます。お客さんからの反応が自信になり、店を持つ決心をしました。
現在は平日は店舗を営業し、休日は庄内に限らず、県内のさまざまなイベントに出店。
人との繋がりを大切に、柔軟な形で「りば亭」の味を提供しています。「自然との距離が近い庄内は食材にも近い。他の地域では、庄内からきたこと自体が付加価値なんです。庄内から美味しいものを持ってきてくれた、と受け入れてもらえたことが転機となりました」
参加者からは、「庄内で当たり前にあるものを、若者視点で良さを見つめ直して改めて外に出そうという動きが盛んになっていると感じる。堀さんの取り組みを筆頭に、これからもっと盛り上がるのでは」という声も聞かれました。
鶴岡への思い
「地元へ戻らないことを決めて出た友達にも届くくらいに頑張りたい」と話す堀さん。何よりも、「同世代が頑張っている」ということが若者に響くという実感があるそう。
コロナ禍の逆境の中で独立をしたのも、前例を示すことで次世代につなげていけるのではないかと考えたから。堀さんの明るい人柄や、他では味わえないオリジナリティ溢れる多国籍丼は評判を呼び、出店先では行列ができるほど。「りば亭」から感じられる、庄内の食の可能性を期待せずにはいられません。
庄内柿から農業の課題解決を目指す 佐久間 麻都香さん
柿から見える農業課題にとことん向き合い、新しい可能性を生み出して実行する、強い芯を持った佐久間さん。庄内を代表する作物である庄内柿をベースにしたエナジーバーを制作、販売しています。
佐久間さんのこれまで
ふんわりとした優しい雰囲気でありながら、海外青年協力隊として渡ったブルキナファソで稲作を指導するというアグレッシブな経歴を持ち、現在は鶴岡でヤギやガチョウをはじめとした動物たちと一緒に暮らすという佐久間さん。鶴岡の観光案内所で働きながら、放置された柿の木の手入れを行う「柿守人」でもあります。
庄内柿を活かす
佐久間さんが「柿守人」となったのは、足が痛くて柿の木の管理ができなくなってしまったおばあちゃんがきっかけ。柿の木にはどんどん実がなりますが、生で食べるには限界があるし、販売できる期間も値段も限られています。その上、収穫の人手も足りません。かといって、放置をすると獣害にもつながってしまう…これは柿の木を所有する人の多くが抱えている、共通の課題でした。柿を加工利用する方法はないものか?と考えた末、辿り着いたのが「柿ベース エナジーバー」でした。
ヒントをくれたのは、研究者であり共同事業者のデイビッドさん。元々エナジーバーが好きで、山登りに行く時などに自作していたそう。「庄内には柿や米といった、美味しくてストーリーのある食材があるから活かしてみては?」というアドバイスが始まりとなりました。特に柿は癖もなく、日本独自の果物であるという強みもあります。加工は大変だからやめろ、と周囲には反対されましたが、そのことが逆に火をつけたんだそう。
初めは佐久間さんの柿農場からエナジーバーを作ろうとしたものの、木の管理からエナジーバーの制作までを全てを担うのはやはり大変。突破口となったのが、干し柿を作ってくれる農家との出会いでした。柿の実を硬い干し柿に加工してもらう代わりに、柿農家さんの課題である「収穫」を手伝う。お互いを助け合うシステムが構築されたことで、良い循環がめぐり始めました。
参加者の中には、「柿ベース エナジーバーは軽いし、嵩張らない上、美味しくて好評。登山には必ず持っていきます。」というファンの方もいました!
現在は手作りで生産しているため、供給に限界があります。しかし、今後は機械を取り入れたり、「おてつたび」などを利用して収穫の人手不足問題を解消していくことで、需要に応え、さらなる広がりを期待しているそう。「農業はやめることも難しい。やめたいけど木を切るには…という人の救いがエナジーバーとなったら嬉しい。」と話す佐久間さん。ひとつひとつの出会いを大切に、あきらめない姿勢がもたらした新しい柿農家の形でした。
ディスカバつるおかレポート、中編では菅原 寛正さん、佐藤 裕太さんをご紹介します。